研究概要 |
経済時系列における因果性検定の理論的研究として、岡本は一般化されたSimsの非因果性の概念を与え、ベクトルイノベイションの共分散関数が対角ブロックであるという仮定の下で、一般化されたSimsの非因果性と同等な二つの条件を示した。また多変量時系列の場合のノイズ寄与率RPCに相当する統計量MRPCを与えた。これはベクトル成分間の共分散行列と時系列の移動平均過程表現の係数行列とベクトル成分のスペクトルによって表わされる。次いでMRPCに対する漸近的検定統計量を導出した。一方因果性検定の実証的研究として北岡は因果性の検定法およびデータ加工の処理過程にいくつかの相異なる方法が使われている事に注目し、統計的方法の相違及びデータ加工の変化に対して検定結果が頑健かどうかを実証的に検討した。検定法とししては、Granger test,Sims test,Pierce and Haugh testのほかに分散分解法,RPCによるものを取上げ、変数はマネーサプライ、名目GNPのほかにコールレートを加えた3変数の場合について検討を行った。データ処理の前提として、1.Simsフィルター,階差フィルターによる定常化、2.季節ダミー変数,センサスX11法による季節調整済み系列と季節調整なしの原系列、3.変数選択としてコールレートを入れた3変数の場合とこれを除いた2変数の場合について行った。モデル選択はAIC基準によった。主な結論としてはダミー変数による季節調整法とRPCによる検定法が頑健性を有しており、定常化フィルターについてはSimsフィルターは適切ではないことがわかった。前川、谷口、藤越の漸近展開に基づく一連の研究は検定統計量の漸近的性質を導くのに有用と思われる。なお岡本の提案した検定統計量の実証的有用性については何等検討が行われていないので、これは今後に残された課題である。
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