研究概要 |
戦後経済のグローバリゼーションは, 世界貿易の拡大のみにとどまらない. 企業の多国籍企業化の割合が年々拡大している事実を見落してはならない. ただ貿易と異なり, 多国籍企業については信頼できる統計が極めて少ない. しかし最近J.M.Stopford,The World Directory of Multinational Enterprise,Macmillan,1983が発表された. それは, 次の3つの基準-(1)普通株25%以上を取得している製造業と鉱業に関する子会社も少なくとも3カ国の外国において所有する企業 (2)外国投資に隨伴する販売額および資産額を, その企業の販売総額および資産増額中少なくとも5%以上所有する企業 (3)在外子会社販売額が少なくとも7500万ドル以上に達する企業-に照らして1981年現在500社を選び, その各社について在外子会社の販売(生産)額を推計し, それを含む多国籍企業の販売総額(=本国内販売額+本社からの輸出額+海外子会社の販売額)を各国通貨をドル換算した上で計算した. その過程を詳細に示したのが研究成果報告書である. このように計算整理した1981年現在の多国籍企業販売総額の順位表は研究成果報告書付表2に示した. それを1981年の各国国民総生産と比較すると, 多国籍企業1社の販売総額が優に1国の国民総生産と比肩しうる規模に達していることがわかる. また多国籍企業498社(資料不足2社)を国別に分類し, それぞれの国に属する多国籍企業のドル表示の販売総額を国ごとに集計し, さらに在外子会社生産額も国ごとに集計し, それらを各国の輸出額で除した値(現地生産・輸出比率)を計算した. その結果現在生産・輸出比率はアメリカ 2.06, スイス 1.26, イギリス 1.25を示し, 多国籍企業の在外子会社生産額がすでにその国の輸出額をはるかに超えていることが判明した. 日本の場合にわずかに0.20にすぎない.
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