課題「イギリス福祉国家の研究-歴史と現状-」のうち、まず現状については、サッチャリズムをイギリス経済(および世界経済)の構造変化という文脈において理解・把握すべく努め、その上で、このサッチャリズムをイギリス福祉国家の変容と構造的に関連させて理解・把握するよう努めた。成果は裏面に記した「イギリス福祉国家の現況と展望」(仮)として今年中に公刊される予定である。 課題中「歴史」については、「研究目的」で強調した「国際比較」(動態的と静態的)の視点を充実すべく努めた。裏面に記した研究成果が明らかにするようにヨーロッパの福祉国家研究は、この点で、新段階に突入したといってよい新しい画期的な成果が発表されつつある。これらの研究成果を十分踏まえて、イギリスにおける福祉国家発達の特殊国民的類型(特質)をかなりの程度まで明瞭につかむことができた。この面では一応満足すべき研究の進展をみた。 しかし「研究計画」で本年度第一の課題として挙げた第2次大戦後のイギリス国民保健(医療)制度の生成過程の研究の面では、当初の期待に比し、研究が渋滞した。ほとんどイギリス在外研究中に揃えたつもりの資料に、やはり欠落部分があり、イギリスから改めて取り寄せるなど資料面の問題が主たる原因であった。しかし、幸い本研究は継続して明年度も認められているので、裏面予告どおり明年度中には成果公刊へこぎつけうる見通しを得た。総じて報告できることは、研究はほぼ順調に進展しており、「研究計画」より一年くりあげて、明年度中には成果を一書に括めて刊行することが十分期待できる状況にあることである。
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