研究概要 |
研究代表者は, 1981年以来, 福祉国家の研究に従事してきた. 本研究課題にかんしては, その間, 「世紀転換期イギリスにおける貧困観の旋回」(1981年), 「失業と国家」(1982年). 「現代イギリス福祉国家の原像」(1984年), 「サッチャー政府と福祉国家」(1985年), 「現代国家の所得再分配機能」(1987年), 「サッチャリズムと社会保障」(1988年), 美の論文を研究成果として発表してきた. 上記の諸作品は, (1)19世紀末〜20世紀初頭における新自由主義の形成と福祉国家政策思想の台頭, (2)1906〜1914年のいわゆる「リベラル・リフォーム」(自由党の改革)によるイギリス福祉国家の本格的端緒の構築, (3)両次の世界大戦と両大戦問題に急速化する国民的統合と社会改革の前進, (4)第二次世界大戦後の労働党政権による現代イギリス福祉国家の建設, (5)1950-60年代をつうずる福祉国家の生長-いわゆる「福祉爆発」を含む-期における変質, (6)1970年代後半以降の福祉国家再編の動向, というイギリス福祉国家の生成と展開の全時期を見渡しつつ, その重要な諸画期をなす主要な変革, または, 主要な変革の契機, を解明してきたといえる. こうして, 一応, 19世紀末以降現時点(1980年代)にいたるイギリス福祉国家の全史と全姿容を見渡しうる地点に到達した. もちろん考察の領域は主として社会保障制度に限定されており, 教育・医療その他の社会サービスの諸領域を全面的にカバーしえていない. 今後の課題は, (1)これらの広範な関連サービスの諸領域との関連をみること, および, (2)上述の諸画期を相互に結びつける歴史的な文脈を確定し, 叙述すること, である.
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