研究概要 |
1.第1年度の研究として、本年度は金解禁をめぐる時期(戦間期)を全体として捉えることのできるテーマについて検討を開始した。またその資料収集の第1年度として、計画書で提起した大蔵省『昭和財政史資料』マイクロフィルムの一部を購入し、また国立広文書館所蔵帝国経済会議速記録の一部をマイクロ化して、整理した。研究実績の前提として以上申し述べておく。 2.研究実績として、以下の通りである。(1),論文「両大戦間期日本貿易構造分析の再検討」『静岡大学法経研究』第35巻3-4合併号(1987年3月刊)において、戦間期を鳥瞰する視座より、貿易構造分析のこれまでの諸業績の再検討を行い、金解禁を含む時期の描出の新しい捉え方を提示した。一言にすれば発展的視角と日本の国際的地位との綜合の視点がこれであり、この方法にもとづく実証分析を次年度、公表する準備を進めている。(2),論文「戦間期日本資本主義の労資関係と権威的秩序の再編」(藤田勇編『権威的秩序と国家』)において、戦間期日本資本主義の国際的地位について、当時の国際連盟報告書の分析を通して明るみに出した。(3)論文「清沢洌」「尾崎秀実」(田中浩編『近代日本のジャーナリスト』)の二篇において、前者で1920年代前半の日本の対外関係を、後者で1930年代のそれを、人物論を通じてあきらかにした。前者での中国問題と国際協調路線、後者の中国問題と大東亜共栄圏構想とは、いずれも金解禁を歴史的転回点として生じている戦間期日本の必至の課題であった。(4)ほかに、書評論文の形で、大石嘉一郎編『日本帝国主義史【I】』について『土地制度史学』113号(印刷中)に掲載し、また、国家資本輸出研究会編『日本の国家資本輸出』について『史学雑誌』に掲載が予定されている(本書は、対中国資本輸出の実証であり、本研究テーマの解明と深くかかわっている。
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