日本における製糖業の発展に関する従来の研究では、資料的制約にもより、製糖業発展の国内的要因の究明に焦点がおかれてきた。しかし、日本の製糖業が輸入代替産業として輸入糖に対抗する形で発展してきたことを考慮すると、輸入糖の生産及び販売構造という外的・国際的要因も同時に考慮に含めないと、その発展過程を十分に把握することはできないと思われる。本研究は、こうした視角から、国内及び海外所在資料を利用して、日清戦争後から1930年代までにいたる日本における製糖業の発達の国際的及び国内的条件を明らかにし、その国際経済の中における意義を解明しようと試みるものである。 本研究は、61年・62年度の継続研究であり、また基本的に資料収集量に依存しているので、本年度は、分析に必要な資料の一括利用をはかるために、台湾製糖・台湾銀行をはじめとする各社史及び報告書、糖業関係図書及び調査報告書の購入・複写、及びマイクロ・フィルムによる資料収集を中心に研究の進展をはかった。各社史及び調査報告書類についてはほゞ計画通りの収集をはかることができたが、雑誌・新聞関係の資料収集を十分に行なう時間的余裕がなかった。海外所在資料のうち、ケンブリッジ大学図書館所蔵の中華火車糖局関係資料は筆写を余儀なくされるために、本年度は十分な資料収集ができなかった。またロンドン大学SOAS図書館所蔵の太古糖房関係資料については、現在マイクロ・フィルムによる資料収集を継続している。 62年度においては、引き続き資料収集を進めるとともに、既収集資料を利用して、上記の視角からの分析を行ないたい。
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