研究概要 |
本研究の主要目的は西ドイツの経済秩序=社会的市場経済の形成を歴史的パースペクティヴの中で考察することである. このテーマはドイツ現代史並びに戦後の複雑な国際政治状況についての十分なる理解を必要とする. このテーマを研究するにあたり, ヴィルヘルム・レペケ(1899-1962)は我々に少なからざる重要な示唆を与えてくれる. 彼はオルドー・リベラリズムの代表的人物で, 1933年にヒトラーによってドイツを追放され, 以後ジュネーブで死ぬまで暮した. 彼は20世紀の二大難問, 大不況と全体主義(社会主義とファシズム)の台頭に直面したが, この中で古典的レッセ・フェールは破産し, 集産的経済体制並びに完全雇用理論が勢力を得ていた. レプケは自由主義を信じ, 自由主義の経済・政治・社会思想を厳しい批判に対して強化ならしめる必要を強く感じた. 彼が理想と考えていたのは, 人々が, 自己の財産と自己決定できる仕事で暮らせるが故に, 経済的自由主義を自明のものとして受容するような社会であった. このような社会のために国家は自由な市場の「枠組条件」を整備し, 他方で, 集産主義を生みだすことになった群衆化を阻止するために財産をもつ独立人を創り出すべきであった. 具体的には健全な農民と手工業者が育成され, そして同時に労働者は庭つきの自分の家を所有すべきであった. これがレプケの「第三の道」論である. 彼のこの考え方が戦後になって西ドイツの社会的市場経済の土壌となる.
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