実際の企業に対して、臨時的に処理能力を増加するというコントロールがどのようなルールで行なわれているかを調査した。調査した企業は、典型的な大物一品生産のT機械製作所、金型を一品ずつ注文生産しているH製作所金型工場、英文による商品のカタログを企画し作成するR社、会計監査および会計処理の指導を行っているK公認会計士事務所、経営コンサルタントのF事務所などである。調査結果を総括するとつぎのように要約できる。 1.いずれの企業も、需要変動を臨時的な処理能力の増加によって吸収している。その中心的な手段は残業であるが、サービス業では外注も大きなフェイトを占めている。2.しかし、いつ、どのくらい処理能力を増加するかというルールについては必ずしも明確化されていない。経験的かつ場あたり的に決定されているようである。3.そのため、遊休や残業などの変動が生じ、稼動効率は必ずしも高くない。 一方、理論的な研究も順調に進んでいる。期間山積計画法を採用している一工程からなる工場モデルに対して、数値計算を通してこのようなコントロールを行ったときの効果とその特牲を解析した。その主な結果は、1.同一負荷率のもとで臨時的な処理能力増加量が等しければ、処理能力を増加するタイミングと能力増加率の組合せ方とは無関係に、遊休時間分布は等しくなる。2.同一負荷率のもとで、臨時的処理能力増加量がある一定値になるようなコントロールをする場合、能力増加量を極端に大きくして能力増加頻度を少なくする方法も、逆に、能力増加量を極端に小さくして能力増加頻度を大きくする方法も、いずれも効果的ではない。両者の間に最も効果的なコントロールの方法がある、などである。 本年度、実態調査を行ってみて本課題の研究が、現実の企業にとって極めて重要であることをあらためて痛感した。
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