研究概要 |
1.まず、揺籃期にあるわが国の国際複合輸送業界が供給過剰のために顕著な過当競争状態にあり、全般的に収益的な事業活動を因難にされている実態がクローズアップされた。2.そうした中にあって、船舶を所有運航しない複合運送人(NVOCC)は国際複合運送業の看板を掲げてはいるものの、その大多数は取扱い量が非常に少なく、まだ収益性のある事業対象になっていないことが、実態調査の結果明らかにされた。この状況は基盤業種である既存の港湾運送事業,倉庫業あるいは陸運業等を競争的に営む上で複合運送人の地位が重要となるから複合輸送業務に参入したという事業者の消極的経営意識に基因している。3.国際複合輸送業務に積極的に取り組み、それなりの取扱い量を示し、採算的にも一応の成功を収めつつあるのは、概して港運,倉庫あるいは陸運等の基盤業種で名声とシェアをもつ大手企業に片寄っている。4.そして、これら大手企業を中心とするNVOCCはほとんど盟外船社を利用しているため、同盟船社にとって強力なライバルの地位に立ち、船社系列のNVOCCといえども親会社に直接貢献しない実態も、みとめられた。5.しかし、わが国の国際複合輸送活動は、このように船社の行うVOCCと船社以外の行うNVOCCの二通りに分けられるが、前者は概してFCLカーゴを、また後者はLCLカーゴをそれぞれ取り扱い、両者の間で機能分担の相互依存関係を安定的に確立し得る可能性をもっている。しかしながら、この国際複合輸送業界に安定的な市場秩序を確立できるようになるまでには、現在の過当競争の経過による弱小企業の自然淘汰を必要とするように思われる。そして、この業界活動に関しては、行政的に介入する必要性が当面考えられない。
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