研究概要 |
共同開発の実行においては、はじめから開発目標が明確に定まっているものと、むしろ異質の経営資源の接触に基づき自然発生的に開発テーマを絞り込んでいくものとの二種のものがある。後者はテーマが決定された後のプロセスを含むことから、前者は後者に含まれると言えよう。 異質な経営資源の結合による共同技術・製品開発の中核的な課題は、資源の多様性をどの程度に保てば開発テーマの創発的発生を高めることができるのかということである。技術情報資源の多様性に基づく調査結果から、この多様性のレベルは常に一定ではなく、むしろ企業間の共同的行為の進展に伴なって変化すべきであることが理解された。 このことと対応して、例えば特定の希少資源をもつ企業の相対的パワーが高まるというように、参加企業間のパワー関係にも変化が見られることが明らかになった。開発テーマが明確に絞り込まれるに従って、各企業の役割が鮮明になり、横並びの平等的関係からある種の命令権限関係へと、企業間関係に変化が見られるのである。 以上のことから、技術的な側面からみた企業間関係とパワー関連からみた側面との理論的な結合をさらに深く究明することが求められよう。その際、これらの二側面が参加企業の価値観,行動規範にどのような影響を及ぼし、イノベーションへとつながっていくのかという、文化的側面との関連も理論の射程に入れる必要があろう。
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