4次元多様体のトポロジーに関しては、4次元球面には固定点が1点のみとなるようなコンパクト群の可微分な作用は存在しないことがモジュライ空間とその上の群作用を考えることにより証明できた。4次元球面上の1-インスタントンのモジュライ空間の微分幾何に関しては、3種の自然なリーマン距離が入ること、そして各々の断面曲率を厳密に決定し、1種は正、残りの2種は負であることを示した。とくにPopov-Fadeevの距離に関する断面曲率はxとlogxの有理式として記述できるが、それ自身興味深い関数であった。計算機による数式処理を有効に利用して、その正値性・単調性を示すことができたが、このようなxとlogxの多項式でx=1の近くでみかけよりずっと高次の無限小になるといった現象を内在する関数は数式処理との関連でも今後注目されることになろう。3次元多様体のトポロジーに関しては、大阪市立大学理学部河内明夫助教授との共同研究の他、大学院生垣水修君の博士学位論文「3次元多様体の半安定端の境界」に代表される多様体の無限遠の近傍の研究に進展があった。解析学では俣野博助教授(研究協力者)と大学院生陳旭彦君の共同による「非線形楕円型微分方程式の解の漸近挙動」に関する無限次元力学系を用いた研究は、2次元の場合のある方程式の特異点のある解の完全な分類を与え、3次元の場合にも発展する勢いである。その他、4次元多様体の中の輪環体を大学院生関根光弘君が詳しく調べ、ある型の埋め込みの特徴付けに成功した。又、数理物理学との関連では素粒子論グループと交流を試みた。多様体上のリーマン距離の変形によるモジュライ空間の変形についても種々の調査研究を行った。
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