本年度は解くべき問題を具体的に設定することと、決め手になる振動積分の評価式を得ることに努めた。 前者については、散乱物体にどのような仮定を置くかを倹討した。未解決のものでしかも基本的である仮定をいくつか考えた。来年度はこの具体的な仮定のもとでの問題解決に取り組む予定である。その第一に予定しているものは、散乱物体が2つの球である場合である。このような基本的な場合ですら、その散乱核の特異点について十分分かっていないのである。 また、後者の振動積分についてはある程度の満足いく結果を得た。勿論、来年度の研究状況によってはさらなる精密化が必要になるかもしれないが。その結果を簡単に説明すると、|σ|→∞としたとき、積分I(σ)=【∫_(R^n)e^(-iσψ(χ))】ρ(χ)dxがどのような挙動をするか調べたものであり、|I(σ)|≧δ【|σ|^α】(as|σ|→∞)という形の評価式が成立するための十分条件を与えている。なお、この結果については下記、「11.研究発表」の欄にある雑誌に発表予定である。
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