1.縮小作用素の研究のため、ヒルベルト空間上の縮小作用素に関するザラントネロの不等式を、バナッハ空間上へ拡張し、応用することを継続考察しているが、いくつかの結果を得た。ここで得られた一つの不等式は、より完全な形に改良される余地があり、引続き不等式の改良を試みている。 2.1で得られた結果の応用として、縮小作用素のエルゴード定理「ノルムがフレッシェ可微分な一様凸バナッハ空間の閉集合上の縮小作用素のチェザロ平均は各点で弱収束し、その極限点はその作用素の不動点である」の、ヒルベルト空間版の証明をバナッハ空間上に拡張推進した。 3.この証明過程は、(1)上記定理の諸条件の緩和、と(2)作用素の反復法と不動点の関係の考察、および(3)非線形作用素方程式の解の存在と近似法の考察、に手がかりを与えるものと思われる。したがって、積み残したこの(1)(2)(3)の問題を引続き考察している。 4.一方、作用素イデセルの研究に関しては、作用素特性の考察の道具として、また具体例の研究に有効な手段として次の結果を得た。内積空間のベクトルに対するリュデンシュトラウスの中線定理を、リットルウッド行列を用いまたそれとの関係を考え、一般化した中線定理を得た。
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