研究概要 |
ガスの乱流による磁場の散逸とダイナモ作用による磁場の再生,および銀河の微分回転による磁場の遷き込みを考慮した誘導・発電方程式を解くことによって、銀河の渦状磁場の形状とその維持機構を調べてきた。銀河の平均磁場を記述するこの誘導・発電方程式は、銀河の形状を考慮した大局的方程式をもとにし、その中の微小項を無視して得られたものであり、準大局的方程式と言える。この方程式の銀河面に対して対称な解を、様々な銀河の物理量について求め、その解の性質を調べた。その結果、渦状銀河の多くに観測される双対対称磁場(BSS磁場)が、銀河のかなりの領域において、宇宙の年齢程度の期間形を変えることなく、銀河の微分回転よりゆっくりと回転し得ること、それらの磁場を維持するための磁場の散逸係数,ダイナモ作用の強さ,ガス円盤の厚みなどの物理量は観測から得られる値と矛盾しないこと,この磁場の形状は、大局的には銀河の外側から内側へ入り込む磁場と、それとは逆に内側から外側へ出ていく磁場からなる渦状磁場であるが、部分的に見ると、銀河円盤とハローの間を出入りする螺線の形状をしていることなどが得られた。この内容の主要な部分はFujimoto and Sawa(1987)にまとめられている。 また、このモデルを実際の系外銀河に観測される磁場の形状(M31などの軸対称磁場やM51などのBSS磁場)に適用し、その銀河の回転速度,ガス円盤の厚みなどの物理量と磁場の形状の比較を行なった。その結果、軸対称磁場となるのかBSS磁場になるのかの違いは、主としてその銀河の微分回転の大きさとガス円盤の厚みによって決まることが示され、このモデルによって実験の渦状銀河に観測される磁場の形状の違いをよく説明できることがわかった。この内容の主要な部分は Lesch et.al.(1987)にまとめられている。
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