研究概要 |
銀河のガス乱流による磁場の散逸効果とダイナモ効果による磁場の再生作用を考慮した誘導・発電方程式を解くことにより, 渦状銀河の磁場の形状とその維持機構を調べた. その結果, 渦状銀河の多くに観測される双対対称磁場(BSS磁場)が, 銀河のかなりの領域において準定常的に維持され得ること, この磁場の維持にはガス円盤の厚みとダイナモ作用の強さが密接に関係していることが得られた(Fujimoto and Sawa 1987b). また, 実際に観測されるいくつかの渦状銀河のガス円盤の厚みやダイナモ作用の強さなどの物理量を与え, それらの銀河でこのBSS磁場が準定常的に存在し得るかどうかについて調べた. その結果, M33, M81, M51, NGC6949にはBSS磁場が存在し得ること, M31とIC342には軸対称の磁場が優勢であることが得られ, この結果は観測されるこれらの銀河の磁場の形状と矛盾しないことがわかった. (Leshe et.al.1988). このBSS磁場の磁力線の形状については, 大局的には腕に沿っているものの, その一部は隣の腕に銀河面内でつながり, そこから銀河面にほぼ垂直になってハローに抜け, ハロー領域をアーチ状に通り, 再びもとの腕にもどってくること, この垂直磁場は, 渦状銀河に見られる銀河面に垂直な吸収帯の形状とよく似ていることなどが得られた. (Sawa and Fujimoto 1987). さらに, このようなBSS磁場が渦状銀河に存在する場合, 銀河のガスは磁場によるローレンツカを受け, その結果, ガスは渦状成分の強い部分の内側に集中することになる. このように, ガスは渦状磁場に沿って集中し, 2本のガスの腕を作る. このことから, 渦状腕の生成に磁場が重要な役割を果たしている可能性が高いといえる(Fujimoto and Sawa 1987b). この後半の2つは, 昨年フランスで行なわれた磁場に関する国際シンポジウムで発表されている.
|