研究概要 |
飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡による観測結果を用いて, 太陽表面における最も激しい活動現象であるフレアー(太陽面爆発)とサージ(紅炎噴出)の発生機構を研究した. 1.磁気シアー構造の発達過程とフレアの発生機構の研究 フレアーエネルギの蓄積機構を調べる為に, 活動領域の進化の過程におけるどの時期に, どの場所で, どのようにしてフレアーが開始するかを詳細に調べ, 次の結果を得た. (1)フレアエネルギーの蓄積にとって, 磁気シアー構造の発達が非常に重要であることを再確認した. (2)磁気シアー構造が形成される過程は次の二つに大別されることを見出した. (A)異なる極性の領域が互いに接近して衝突する場合. (B)双極黒点領域の下から新たに傾きの異なる双極磁場が次々と浮上してくる場合. (3)上記の(B)のタイプによって急速に磁気シアー構造が発達する場合には, 大規模な強いフレアーの発生する確率が高い. これらの成果は62年4月にハワイ大学で開かれた日米セミナーで発表された. 又 間もなく出版されるSolar Physics(1988)に掲載される予定である. 2.浮上双極磁場の誕生時におけるサージ活動の研究 双極磁場が出現する最も初期の進化を詳細に調べた結果, 11例中6例の場合について, 顕著なサージ活動が見い出された. 前年度に得た結果を加えて総合的に分析した結果, サージ噴出が磁気再結合の結果生ずると考えて矛盾しないと結論した. この成果は62年10月に中国で開かれた国際天文学会のアジア地域総会で発表された. 又Vistas in Astronomy(1988)に掲載予定である. 以上この研究によって色々と重要な知見を得たが, 更に引き続いて, より詳しく今後問題点を煮詰めて行く必要がある.
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