1.岡山天体物理観測所188cm望遠鏡クーデ焦点に新たに設置された、RCA社製CCDを用いて、恒星の近赤外線の高分散スペクトルを観測するテストを、昭和61年4月と同年7月の2回行った。いくつかの明るい恒星を観測し、比較的質の高いスペクトルが得られることがわかった。昭和61年度はテスト観測が中心であったため、受光器の性能を調べることに重点がおかれた。昭和62年度は、このCCDを用いて、化学特異星の近赤外スペクトルの観測を本格的に行う予定である。 2.水銀-マンガン星多数のIUE衛星で得られた紫外スペクトルを使って、これらの星には、中性ちっ素(NI)の吸収線が、ふつうの星に比べて弱くしか見えないことを発見した。これらの星のスペクトル中のちっ素の吸収線を定量的に解析した結果、水銀-マンガン星の大気中のちっ素の量は、太陽に比べて100分の1しかないものを含めて、すべての星で不足していることが明らかになった。(昭和61年10月、日本天文学会秋季年会で報告)。 3.同じく、IUE衛星を使って得られたスペクトルを使って、水銀-マンガン星のスペクトル中に見られる-回電離亜鉛(ZnII)の共鳴線を定量的に解析した。水銀-マンガン星の中には、亜鉛の量が、太陽に比べて100倍も多い星がある一方、太陽に比べて10000分の1しかない星もあることがわかった。これらの新しい観測事実は、化学特異星の起源を説明する理論を作る上で、重要な事実である。(昭和62年2月、アストロフィジカル・ジャーナル誌に投稿した。)
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