研究概要 |
1.国際紫外天文衛星(IUE)で観測された, 早期型恒星の高分散スペクトルを用いて, 23個の水銀-マンガン型(Hg-Mn)特異星と6個の正常星の亜鉛(Zn)の存在量の定量分析を行い, 結果を論文として発表した. 主なる結論は次の通りである. (1)正常星(B5型からA0型まで)における亜鉛の量は, 太陽大気中の量とほぼ等しい. (2)Hg-Mn星の中には, 太陽大気より100倍多くの亜鉛をもつものがある一方で, 太陽大気より1万分の1しかもたないものがある. しかも, このような過剰と不足が同程度の表面温度をもつ星でおきている. このような現象の説明は, 化学特異性の起源を解明する上で, クリアしなければならない重要な点である. 2.1987年9月スイスのローザンヌ大学天文台で開かれた, 恒星の化学組成解析に関する国際研究集会に出席し, 論文を発表した. この集会は, 同一の観測データを用いて, 独立した複数の研究者が解析を行い, その結果をもちよって結果を比較検討し, 最も信頼しうる解析法を作り上げる目的で行われた. 8ケ国からの研究者30人が参加した5日間の研究会は, 大変厳しくはあったが, 有益であった. 3.明るいA型星シリウスとベガの水銀量についての定量分析を完了した. 分析には紫外線スペクトル中の1回分離した水銀の共鳴線を使い, スペクトル合成法によって行った. ベガの水銀量はシリウスより約100分の1と少なく, これは, 太陽系の化学組成よりも有意に低いことを見出した.
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