1.国立天文台岡山天体物理観測所の188cm展望鏡のクーデ焦点にとりつけたRCA社製のCCDカメラを用いて、12個のA型星の近赤外スペクトルの観測を行った。データ解析の方法を大学院生尾久土正己と共同で開発した。波長8700〓近くにある中性窒素(NI)、中性硫黄(SI)の吸収線を同定し、それらの等価巾を測定した。12個の星の有効温度と表面重力を測光データなどから推定し、モデル大気の計算をATLAS6プログラムを用いて行った。これらのモデル大気を使って、NI、SIの吸収線の強さをWIDTH6プログラムを使って行った。結果として、正常な星でのNとSはほぼ太陽と同じ量であるが、Ap星(73Dra、εU.Ma)では、NとSの両方共大巾に不足していることが明らかとなった。 2.全天で最も明るい恒星でしかも金属線星(Am星)であるシリウスの化学組成解析を、キットピーク天文台(アメリカ)で作られた高品質のスペクトルアトラスを用いて行った。使用すべき吸収線をきびしく吟味し、原子物理学的データ(gf値)も最新のものを用いて解析を行った。結果として、信頼性の高い化学組成値が得られた。 3.北天のA型星πDraconis(HD182564)の高分散スペクトルの定量解析をモデル大気を用いて行った。観測は1983年8月に岡山天体物理観測所188cm展望鏡クーデ焦点で写真を用いて行われた。Am星68Tauriを比較星として解析した結果、πDraもAm星の特徴を示すことが明らかとなった。
|