研究概要 |
今年度行った研究は, 主に次の3項目からなる. 最初の2項目は, 前年度の研究を発展させたもので, 第3の項目は, 新たに加わったものである. 1.バリオン・光子・無衝突ダーク粒子からなる宇宙における密度ゆらぎの時間的発展を, ゲージ不変な方程式にもとづいて調べた. 再結合期の前から解き始めて現在のゆらぎの値を求め, 宇宙背景放射の非等方性の度合を決めた. この値を, 観測値と比較している. 2.ダーク粒子が, 冷い粒子と, その崩壊によって生れる崩壊粒子からなる宇宙モデルにおける銀河の集団化(クラスタリング)と銀河団の集団化をN体シミュレーションの方法により調べた. 銀河間の相関関数と銀河団の相関関数を別々に求め, それぞれの観測値との比較を行った. 2つの相関関数の間のギャップは, 宇宙論における大きな謎であり, それの解明の一つの助けになるものと思う. 3.ゆらいだフリードマン宇宙モデルにおける観測量の間の関係式を, ゲージ不変な方式で求めた. ゆらぎをもたない宇宙モデルのものに比べ, 宇宙の大規模についての情報をもたらす点でより有効である. 以上の研究の成果は, 物理学会・天文学会で発表し, かつ, 学術雑誌においても発表した.
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