今年度行った研究は、主に次の3項目からなる。最初の2項目は、前年度の研究を継続し発展させたもので、第3の項目は、新たに加わったものである。 1.バリオン・光子・無衝突ダークマターからなる宇宙における密度ゆらぎの時間発展を、2種類のダークマターについて調べた。また、ゆらぎについては、断熱ゆらぎ、および、等曲率ゆらぎの場合をとりあげた。宇宙背景放射の非等方性へ及ぼす影響を調べ、その値を観測値と比較した。 2.銀河団の集団からなる宇宙の大規模構造の進化を調べるため、一辺が200メガパーセックの箱の中に分布する約1000個の点(銀河団)の位置の力学的発展を調べた。観測される宇宙の構造の注目する局面を再現することが可能であることがわかった。 3.天文学的観測は、光・電波等の電磁波をとおして行われるが、これらは、非一様な物質分布の中を通過するとき、重力によって行路を曲げられる(重力レンズ効果による)。これまで調べた非一様宇宙モデルにおいて、どの程度の影響があるかを推定し、モデルのパラメターによっては、非常に大きい影響があることがわかった。このような、非一様物質分布が光学的観測に及ぼす効果は、これまで調べられていなかったので、今後、詳しく調べ発展させていきたいと思う。 以上の研究の成果は、天文学会、物理学会で発表し、学術雑誌においても発表している。
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