研究概要 |
超対称性をもつ弦理論は重力場を含む統一理論を与える可能性をもつものとして大いに注目を集めているが、同時に多くの興味ある数学的問題を提起しており現代数学の諸分野にも新鮮な刺激を与えている。本研究では、弦理論を含む一般の共形不変な場の理論に関してその数学的構造の解析を主要なテーマとして研究を進めた。又、研究会,集中講義等を通して数学者との議論の発展と交流に努めた。 まず主要な研究成果は論文1"conformal and current algebras on generalRiemann surface"(Nucl.Phys.Bに刊行予定)に含まれているが、ここではまず経路積分の方法を用いて一般のRiemann面上で定義された共形不変な場の理論のward identityを導いた。次にこのward ideltityからエネルギー運動量テンソルとconformal fieldの間のshort distance展開を導く。こうして得られたshort distance展開の分析から各座標近傍毎で定義された共形代数(virasora代数)がRiemann面全体に拡張して定義される事が示される。この結果を用い更に縮退したVirasoro代数の表現論を用いるとconformal fieldの相関関数に対する微分方程式が得られる。なお、一般のRiemann面上での共形不変性に関するward identityはRiemann面のモデュラスに関する微分を含み、特にエネルギー運動量テンソルの相関関数は真空のエネルギーのモデュラスに関する微分で表わされる。また、この論文の後半ではカレント代数に関するWard identityとshort distance展開を議論した。 京都大学数理解析研究所での研究会「統計モデルと可解構造」、5月21日〜5月24日、ではVirasoro代数の縮退表現と統計力学の可解な模型の関係を議論した。東京大学数学教室と台湾学士院(Academia Sinica)での集中講義、6月30日〜7月3日と8月6日〜8月9日、では最近の弦理論の進展と論文1を紹介した。
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