研究概要 |
神岡チェレンコフ検出器で観測された荷電粒子による約700万例のチェレンコフ光量,パターン,光電子増倍管へのチェレンコフ光の到達時間のデータを電算機で解析した。これらから神岡検出器の主タンクを通過した荷電粒子を除外し、主タンク内で停止した荷電粒子の事象のみを選択した。これらの荷電粒子が検出器外から飛来したことは、主タンク外層の検出器の信号で確認した。これら粒子の飛来方向をチェレンコフ光量と時間関係より求めた。その方向は誤差5度以内の精度で得られた。これは主タンクに用いられている光電子増倍管の直径に相当する誤差で、方向決定のプログラムが妥当であることを示した。更にこれらに20マイクロ秒以内遅れて、主タンク内部で発生した荷電粒子によるチェレンコフ光を随伴した事象を選択した。この随伴事象が電子であることは、チェレンコフ光のパターンの周線のふるまいにより確認した。これにより、これらが主タンク内で停止し、崩壊したμ粒子であることを確認した。得たμ-e崩壊事象は6514例である。主事象と随伴事象間の時間差の分布を求め、それが平均寿命2.19マイクロ秒であることを確認した。【μ^-】粒子が水中で示す平均寿命1.80マイクロ秒を用いて神岡検出器の位置での【μ^+】/【μ^-】比が、1.17±0.27と得られた。これは海面上での【μ^+】/【μ^-】比と一致している。また、崩壊電子の飛行方向を求め、μ粒子の偏極を求めたが、これは統計がまだ不十分であるが、加速器実験による偏極データと一致している。今後更に事例を集積し、【μ^+】/【μ^-】比の精度を高め、後にまで利用されるデータとしたい。 神岡検出器を通過した荷電粒子のエネルギーを求める試みを行ったが充分信頼できる結果はまだ得られていない。今後この方向でのデータを得ることを予定している。
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