ランダウ・ジナー効果を完全に量子力学的に取り扱う枠組の整備を行った。研究代表者が提唱した重イオン原子核反応における共鳴的現象を取り扱うためには、重イオン間の相対運動を原子・分子衝突で従来行なわれている半古典的取り扱いではなく、各部分波に分離し、かつ散乱系に固定した座標系で量子力学的に記述し、散乱問題を解く定式化を行った。そこでは、散乱系に固定した座標系における、クーロン漸近解が正しく定式化されている。この定式化にもとづき、数値計算プログラムを作成し、すでに、空間固定座標系で解かれている。通常のチャネル結合問題に適用し、正しい答を与えることを確めた。今後、ここで定式化された枠組に、2中心殻模型による断熱エネルギー曲線及びその波動関数による結合ポテンシャルを導入し、共鳴的現象の解析を行いたい。今年度後半には、その予備的段階として、模型的2準位問題において、如何なる場合に共鳴が起こり、如何なる場合に消失するかを明らかにしつつある。さらに、共鳴をひき起こす、他の機構についても若干の検討を行った。
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