超対称弦模型にもとづいた大統一理論として、カラビ・ヤウ多様体にコンパクト化する模型が多くの研究者によって検討されてきたが、現実的模型の構築は成功しておらず、又理論的にも困難があることが明らかとなってきた。従って本研究の計画の一つとして予定していた上記の模型による詳細な現象論的分析は保留とし、もう一つの課題である超弦模型が与えうる大統-理論の多様な可能性の解明に集中することとした。最近弦のコンパクト化に関して世界的に急速に研究が進み、当初考えられていたものよりはるかに多くの可能性があることが明らかになりつつある。特にオービフォルド上への弦のコンパクト化は、理論の現象論的側面とのつながりにおいて重要な役割りをはたしうると考えられる。しかし弦理論の有限性に密接に関係したモジュラー不変性は、オービフォルドについてはまだ十分に解明されておらず、又、オービフォルドとしても、トーラスを可換群Znで割ったものの考察にとどまっている。理論の多様性の解明という観点からみると、非可換群にまで拡げたオービフォルドの研究が望まれる。従って本研究においては、まず「非可換」オービフォルド上の弦の定式化を行ない、その具体的応用として、トーラスに自然に入る有限群であるワイル群によるオービフォルドについて、閉じた弦の真空振幅のモジュラー不変性を調べた。その結果、Znの場合に存在したモジュラー不変性は、非可換群の場合(具体的にはSU(3)及びSU(4)トーラス上で)完全には成り立たないが、しかしその部分群による部分的モジュラー不変性が少なくともノーループの段階では存在することが明らかとなった。この部分的不変性が理論の有限性を保証するのに十分であるか、又非可換オービフォルド上の弦が大統一理論についてどのような可能性を与えうるかの検討は今後の課題である。なお、上記の研究の結果は現在論文を準備中である。
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