研究概要 |
本研究の目的である高密度近藤系超伝導体、及び非磁性高密度近藤系の低温の性質を解明するため、補助金により低周波(0.5〜30MHz)高感度コンピューター制御核磁気共鳴(NMR)装置を製作し、順調に稼動し以下の研究成果が得られた。 1.高密度近藤系超伝導体Ce【Cu_2】【Si_2】のスピン帯磁率の研究超伝導転移温度Tc以下でSi及びCuのナイトシフトを測定し、この系のスピン帯磁率がTc以下で、結晶方位に依存せず減少することを明らかにした。Ce【Cu_2】【Si_2】は超伝導エネルギーギャップは異方的で通常のBCS超伝導体とは著しく異なっているにも係わらずクーパー対はBCSの場合と同様一重項対であることが本研究により実証され超伝導の機構解明に寄与するものと思われる。 2.非磁性高密度近藤系Ce【Cu_6】,Ce【Ru_2】【Si_2】のLa希釈効果の研究Ce【Cu_6】のCeをLaで26%希釈した系の核磁気緩和時間【T_1】を測定し、高温で局在していたCeの4f電子が低温で遍歴し始める温度【T^*】がCe【Cu_6】の【T^*】=0.2Kに比べて希釈系では【T^*】=0.08Kと著しく低下することを見い出した。このことから、Ce【Cu_6】の低温での4f電子の遍歴性はCeの周期性が本質的であることが明らかとなった。 一方Ce【Ru_2】【Si_2】ではCeをLaで10%,希釈すると、【T_N】【_!〜】2K以下で4f電の遍歴性に起因した反強磁性秩序が発生することを見い出した。Ce【Ru_2】【Si_2】は低温で反強磁性相互作用が強く、磁気秩序に近い状態にあることがわかった。Ce【Cu_6】とCe【Ru_2】【Si_2】の基底状態は非磁性でも大きく異なりこの差違を明らかにすることが今後の課題である。
|