研究概要 |
電子状態と格子変形との絡みを調べることを目的として研究を行なっているが、3つの異なったアプローチによって問題に取り組んだ。最終的には、それらの結果を総合して、全体像をつかまえたいと考えているが、ここではそれぞれについてこれまでに得られた具体的な実績をまとめる。 1.バンド計算におけるグリーン関数法にコヒーレントポテンシャル近似を適用し、Fe,Niを含む強磁性3d遷移金属合金(FeV,FeCr,FeMn,FeCo,FeNi,NiCr,NiMn,NiFe,NiCo,NiCu)について全濃度域にわたって電子状態を計算した。その結果、磁化についてのスレータ・ポーリング曲線が定量的に再現されることがわかり、KKR-CPA-LSD法の有効性,信頼性が確認された。現在、格子歪みに対する結晶の安定性を調べる為に全エネルギーの計算を行なっている。 2.γMu等のfcc反強磁性遷移金属について、多重スピン密度波(MSDW)状態の電子構造をタイトバインディング模型を用いて計算し、安定なMSDW状態と電子数との関係を議論した。更に、fctに格子変形させた場合についても計算を行ない、安定なMSDW状態が格子変形によってどう変わるか調べた。その結果、MnFe合金でのMSDW状態の濃度変化を説明することができた。現在、より精度の高い計算を準備中である。 3.CsCl型規則合金【Au_x】【Mn_(1-x)】(x〜0.5)において、濃度(x)と温度(T)で張られる平面内での反強磁性構造と格子変形に関する可能な相図をランダウの現象論に基ずいて考察した。Mn原子の磁気モーメントの空間的変調を記述する3つの同等なQベクトルに対応する副格子磁化と格子歪との結合を考慮することにより、実験で報告されている正方対称相(c/a<1およびc/a>1)が出現すること、および斜方対称相が出現する可能性があることを示した。
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