研究概要 |
生体膜・生体関連物質等々の超分子集団・結晶表面の形状・モルフォロジー・結晶表面に吸収した原子集団,等々の系においては、トポロジー的励起が諸種の物理現象において重要な役割を果している。その中でも特に線状のトポロジー的励起が主役になっていることが多い。研究代表者は既に生体膜においてこの問題を理論的に解明する手法を開発して来たが、今回はその手法を、結晶表面の統計力学に拡張した。その手法は「格子フェルミオン法」と名付けられた。結晶表面を構成するAnisotropic Rectangular Latticeに吸着した原子集団がどのような平衡相をとり得るか、と言う問題、およびそれら諸相間の相転移の性質が解明された。特に、新しい相-Incomm-ensurate2-が発見され、その物理的特性が明らかにされた事を特記しておく。一口に言うと、エントロピーに起因する反強磁性(Entropy Antiferromagnetism)である。この全く新しい相の示す物理計測上の特性-例えば、X線散乱の強度分布-を明らかにした。 結晶表面の形、特にFaceting、Roughning等の統計力学も、全く同じ手法(格子フェルミオン法)によって調べられた。その結果、Facetのヘリが滑らかでなく、或る角度をもって周辺部に移行し得ることが、理論上始めて指適された。 神経伝達の「非線型拡散-修復方程式」は、ニューロ・サイエンスの問題ともなり、ニューロン・回路網の基本単位となる神経細胞の物理特性の問題として火急の問題である。こゝでは手始めとして、AXONが静止電位の状態にあるときの、膜電位のゆらぎの問題を、AXONが一様ではない、と言う事実を考慮して、線形拡散・減裏方程式に、ノイズ項を取り入れた理論を構築して、たんねんに調べた。その結果を長文の論文にして、Physical Review Aに投稿した。
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