(1)生体膜の相転移の"動力学"。これについてはTDGL法と同じ精神で、理論を構築し、無秩序パラメータ、脂質の間隔等の変数が、空間的に、また時間的に、どのように変動するかを記述し、また中性子の小角散乱との関連を論じた。Izuyama-Akutsu(1982)で言う凝臨界性の動力学への反映である。膜面の安定性、ゆらぎ、の理論もこのカテゴリーに属する。くり込み群の手法によって膜面のブラウン運動が作り出す相転移も存在し得ると結論した。これは新しい理論であるが、より動力学的な理論も予定中。 (2)膜中における膜質タンパクの動力学。これは膜生理にしはしば登場する重要テーマである。流体力学像およびこれと対照的な確率過程モデルによって、膜面上でのタンパクのブラウン運動の統計力学てき理論を構築した。(J.Phys.Soc.Jpn(1989)) (3)結晶成長における"テラス・ステップ・キンク系"の動力学。脂質二重膜の相転移においてはアルキル鎖のキンク等が膜面を上から下へ連って作り出す。stringがトポロジカル励起モードであった。結晶表面ではステップがstringになる。エントロピを稼ぐためにstringはくねくね曲がる。すなわちキンクが到る所できている。結晶表面におけるFacetのへりはこの系の相転移として理解される。この理論はJ.Phys.Soc.Jpn(1987)等に発表した。 (4)、(5)結晶の融解のdislocation理論。dislocationやdiscoinationは典型的なトポロジカル励起である。これの新しい理論をJ.Phys.Soc.Jpn(1988)に発表。極めて長い高分子鎖の結晶の融解は、この理論が厳密にあてはまる例で、その二次元モデルの厳密解も、J.Phys.Soc.Jpn(1988)に発表した。 (6)高温超伝導の理論。これは当初の予定になかったが、トポロジー的励起が主役を演じる。この研究も始めた。まず基礎理論を作ったが磁束stringのトポロジーが今後の課題。
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