1.φ^4系のソリトン: フォノン-ソリトン散乱の高次過程で運動量が交換されることがソリトン拡散運動の機構の一つである。フォノン量子化によって静的抵抗係数は低温で古典統計のT^2から活性化型温度変化になって小さくなることが示され、φ^4系はソリトン拡散のお手本としての役割を果した。 2.ポリアセチレンのソリトン: (1)光学フォノン: 結合の強い光学フォノンは位相のずれの解析の結果低次過程でソリトンやポーラロンと衝突して運動量交換をすることが判った。同過程で生じるソリトンの酔歩運動と合わせて拡散の温度振動数変化が導かれた。φ^4同様量子化の効果は大きい。 (2)音響フォノン: 弱結合だが低温で励起し易い音響フォノンは重要である。数値解の他、連続体近似との差を攝動論で調べる研究が進んでいる。 (3)電子相関: 相関をハートリーフォック近似で考慮するかぎり、ソリトン、ポーラロンのまわりのフォノン局在モードに定性的変化はないこと、この近似は相関を大きめに評価していることが示された。 3.ポリアセチレンとドーピング: 一次元電子格子系にランダムに不純物が入った模型で、数値的および解析的に調べた。ソリトンの生成とピンどめ、赤外不活性フォノンの活性化、新種のソリトン、不純物帯の有無等について知見が得られた。ソリトン格子の相転移にもこの方法が応用できる。 4.ポリアセチレンの光誘起ラマン散乱: 光によって作られる励起がソリトンかポーラロンかは赤外吸収では区別できない。光誘起ラマン散乱なら可能であることを指摘した。 5.分数電荷ソリトン: その構造を解析的に求めるのは成功しなかったが数値解は完全に調べられ、数種類のソリトンがあることが示された。将来の研究の指針となるものである。
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