研究概要 |
本年度は, 最近接相互作用が反強磁性的である場合および強磁性的である場合の両方(第2近接相互作用はいずれの場合も反強磁性的)について, 相互作用の異方性も考慮に入れて, 1次元格子上の量子ハイゼンベルグスピン系(スピンの大きさは1/2)を考え, 主としてこの系の基底状態の性質を調べた. 用いた計算方法は, 昨年度と同じく, スピン数が20個までの有限系に対する厳密解を, 系のハミルトニアンを対角化することによって求め, それらを無限系に外挿する方法である. この方法により, 無限系における基底状態のエネルギー, スピン相関関数, 磁化曲線, 基底状態と第1励起状態との間のエネルギーギヤップなどの相互作用定数依存性を, 十分な精度で求めることが出来た. 特に, 1.最近接相互作用が反強磁性的である場合: この場合, 第2近接相互作用の大きさが最近接相互作用の大きさの1/2倍を越えると, 基底状態は反強磁性状態からincommensurate状態に移る事が分かった. また, 相互作用の異方性がXY型である時には, 相互作用が等方的である時と定性的に同じ結果か得られ, エネルギーギャップが存在しないspin fluid相とエネルギーギャップが存在するdimer相とから成る相図を書くことが出来た. 現在, 相互作用の異方性がIsing型である場合の基底状態の相図を求めている. 2.最近接相互作用が強磁性的である場合: この場合は, 第2近接相互作用の大きさが最近接相互作用の大きさの1/4倍を越えると, 基底状態は強磁性状態からincommensurate状態に移る. また, この場合には, 相互作用の大きさによらず, エネルギーギャップは存在しないことも分かった. なお, 量子転送行列法を用いた有限温度に対する計算も, 相互作用が異方的である場合について, 現在進行中である.
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