研究概要 |
最近接および第2近接相互作用をもつ1次元格子上の量子ハイゼンベルグスピン系(スピンの大きさは1/2)を考え、この系の静的性質および動的性質を研究した。第2近接相互作用は反強磁性的であるとし、一方、最近接相互作用については、それが反強磁性的である場合(以下で場合AFと呼ぶ)と強磁性的である場合(以下で場合Fと呼ぶ)との両方を取り扱った。 1.静的性質 (1)基底状態:スピン数が200個までの有限系に対する厳密解を外挿する方法を用いて、無限系でのエネルギー、1重項ー3重項エネルギーギャップ、スピン相関関数、磁化曲線などを計算した。特に、場合AFで、相互作用が等方的である場合或いはXY型の異方性をもつ場合、第2近接相互作用の大きさを増していく時、エネルギーギャップが存在しないspin fluid相から、それが存在するdimer相への相転移が起こることが分かった。 (2)有限温度:量子転送行列法を用いて、系の内部エネルギーや比熱、またスピン相関関数の遠距離挙動を記述する相関距離や波数の温度依存性を計算した。その結果、古典スピン系の場合と同様に、量子スピン系においても、場合AFと場合Fの両方で、スピン相関関数の遠距離挙動の相互作用定数・温度変化に特徴的なdisorder lineが存在すること等が示された。 2.動的性質 場合AFで、相互作用がイジング型の異方性をもつ場合について、系の動的性質を調べた。特に、イジング極限でのdegenerate pointの近くで、Neel型および(2,2)ーantiphase型の基底状態に対してはsoliton型の素励起が、また、singlet-dimer型の基底状態に対してはtriplet-dimer型の素励起が、propagating modeとして存在することを見いだした。
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