研究概要 |
非線形現象におけるソリトン描像の適用性を調べるために, 次のような研究を行なった. 1.非線形問題の典型的な一例として, 曲げとねじりの両方の効果を取り入れた1次元弾性体理論を発展させた. 高分子やDNA等に対する巨視的模型と考えられる. さらに, 1次元的物体に対するトポロジー的制約を考慮して, 取り得る空間構造を調べた. この理論により, スーパーコイル状態を記述することに成功した. 2.ソリトン理論の手法を拡張して, 場の理論や統計力学を含めた厳密に解ける模型の構造を考察した. 特に, 1次元フェルミ粒子系の理論を発展させた. このことにより, 高温超伝導体に関連して再び注目を集めているハバード模型が完全積分可能系であることを証明した. LAX対, YANG-BAXTERの関係式, 無限個の保存量, を具体的に求めている. 3.統計力学における解ける模型の理論が, 数学のトポロジーの問題に対する解答を与えることを示した. 解ける模型の十分条件であるYANG-BAXTER関係式は, スペクトルパラメータu→∞の極限で, 組みひも群の表現を与える. さらに, MARKOVトレース不変な量を構築できる. よって, 統計力学における解ける模型に対応して, 結び目・からみ目の不変多項式が必ず得られることがわかった. 以上のように, 62年度の研究計画は, ほぼ完全に遂行されたと考える. 特に, トポロジーのひもの分数への応用は, 全く新しい発展であり, 予想外の成果であった. ソリトン理論が持つ数学的構造は, 予期以上に多彩であり, 新しい物理数学の一分野を拓きつつあると感じている.
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