ソリトン理論を基準に次のことを明らかにした。 1.まげとねじりの両方の変形を取り入れた1次元連続体理論を構成した。さらに、この定式化にトポロジー的付加条件を加え、 DNAスーパーコイル状態に対する巨視的理論を提出した。 2.ソリトンの量子論を発展させ、どのように古典ソリトンが量子ソリトンから得られるかを説明した。この定式化は、外力下でのソリトン分裂を記述するのにも適していることが示された。 3.量子逆散乱法によって、ハミルトン力学での解ける模型と統計力学における解ける模型とが統一的枠組みのなかで理解できるようになった。特に解ける模型の十分条件としてのヤン・バクスター関係式の重要性が明らかになった。ヤン・バクスター関係式を実際に解くことにより、2次元古典統計力学には、少なくとも∞×∞個の厳密に解ける模型が存在することが明らかにされた。これらの模型から計算される相転移の振舞いは、共変場理論から予想されるものと一致する。 4.統計力学における解ける模型から、結び目・絡み目に対する不変量である絡み目多項式を構成する一般論を発見した。ヤン・バクスター関係式から組みひも群の表現が得られ、その表現上でマルコフ・トレースが定義される。特に、N状態バーテックス模型から構成される絡み目多項式は有名なジョーンズ多項式を含み、さらに強力なものになっている。2変数拡張や新しい代数等多くの興味深い結果も得られている。 以上のように、非線形現象を取扱うソリトン理論は、量子場の理論・統計力学模型と対象を拡げることにより、多くの新しい現象を予言するとともに、興味深い理論構造を持っていることが明らかにされた。さらにこれらの点を発展させていきたいと考える。
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