研究概要 |
レーザー光誘起過渡格子によるコヒーレントフォノンの発生と、その光学的な検出の実験を行なった。更に、周期的な光励起を用いてコヒーレントフォノンを連続的に発生させることに成功した。また、常磁性結晶におけるスピン相互作用の研究の基礎となる予備実験を行なった。 まずQスイッチYAGレーザーの第二高調波パレス(・λ=530nm,10ns,100kw)を2つのビームに分けて試料(色素を混入したエタノール)セル中で交差(交差角θ)させて、瞬間的に試料温度の周期構造を誘起することにより、波長Λ=λ/2sin(θ/2),振動数υ=υ/Λ(υは音速)のコヒーレントフォノン(超音波)を発生させると共に、これをプローブ光(He-Neレーザー,633nm)のブラッグ回折を用いて連続的に観測した。例えばθ=9mradの場合の測定値ν=20MHzよりυ=1200m/sを得た。また、細いプローブビームの照射位置を変えることにより、超音波の伝搬を直接的に観測できた。次に連続発振のモード同期Arレーザー(λ=515nm、平均出力〜100mw)の周期的パルス列(繰返し周波数υo=132MHz)で周期的励起を行ない、θを連続的に変化させながら発生する振動数υoの超音波の振幅変化を測定することにより、υo=υ=μ/Λの条件で振幅の共鳴的増大を観測することに成功した。(共鳴の幅はビーム径と超音波の減衰定数に依存する。)この結果から、共鳴条件をみたす周期的光励起によって、コヒーレントフォノン(超音波)を効率よく連続的に発生させうることがわかった。 また、常磁性イオン【Tm^(2+)】をドープしたSrF2結晶を用いたスピンフォノン相互作用研究のため、まず液体ヘリウム温度の試料に円備光パルス(530nm)で誘起したスピン偏極をプローブ光(633nm)を用いて検出して、スピン格子緩和時間【T_1】の磁場変化を測定した。次にスピン遷移に共鳴するフォノンを発生させ、偏極への効果を調べる予定である。
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