研究概要 |
カオス運動の解析として(a)運動によって生じた"ストレンジアトラクター"の解析(b)運動によって生成された"時系列"の解析がある。aについては一般フラクタル次元【D_q】を用いた研究がなされており、最近Halseg等によって【D_q】の熱力学形式が構成された。bについては時系列の拡散的性質と間欠的性質を解析する相似指数【λ_q】が我々によって導入された。【λ_q】は自由エネルギーと同様な数学的構造をもっており、qが逆温度βに対応している。両者は"filtering parameter"としてその対応の意味を把握できる。自由エネルギーと同様な構造をもつ特性量は乱流理論にもある。以上の様な理論形式を"自己相似性"を基本仮定として統一し、ルジャンドル変換によって熱力学体系を構成する。変数【A_n】と【A_(n+1)】の比が統計的にnに依存せず定常であるとき、【A_n】は"自己相似"であるとする。例えばカオス運動から生成される定常列{【U_0】,【U_1】,【U_2】,…}より【A_n】=【A_0】exp(【Σ(^(n-1)_(j=0))】【U_j】)を作れば、【A_n】は"自己相似変数"となる。またアトラクターの次元の場合は、スケールεの立体の中に位相点が来る確率の逆数を取ればよい、たゞしnはln(1/ε)に対応させる。【A_n】のモーメント【M_n】(q)三〈【An^q】〉より自由エネルギー対応量はλq=【1/q】【(lim)!(n→00)】【1/n】lnMn(q)で定義される。鞍点法を用いたルジャンドル変換により内部エネルギー対応量αはα=【d/dq】(qλq)、エントロピー対応量σ(α)はδ(α)=-【】dλq/dq^(-1)【】と求まる。これらは熱力学関係式を満たしている。アトラクター、時系列、乱流速度などの大域的性質がλq,α,σ(α)により解明される。以上により定常カオスの統計熱力学を含む理論形式およびその形式の解釈が出来たといえる。 また「結合振動子系のカオス」および「スピングラス型時系列」に上記の方法論を適用して研究した。
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