研究課題
重イオン衝突によって生成される2次イオンの電荷分布を既存の装置で測定した。重イオンは理研の重イオンリニアックからの1.05MeV/amu【Ne^(q+)】および【Ar^(q+)】イオンを使用し、気体の原子・分子ターゲットを用いた。原子ターゲットをNeとした時、生成される2次イオン【Ne^(i+)】はi=9までを観測した。この電離断面積を同じ電荷の入射イオン【Ne^(10+)】と【Ar^(10+)】で比較すると、i=1〜6の領域では断面積はほぼ同じであるが、i【>!_】7では、【Ne^(10+)】イオン衝突の時の方が大きく、またiが増すとともにその差は急激に大きくなる結果を得た。これは衝突系が【Ar^(10+)】-Neのときには直接電離が主であるのに対し、【Ne^(10+)】-Ne系の時には、直接電離だけではなく、NeK-K殻電子移行反応が寄与していると考えられる。以前分子ターゲットを【N_2】にした時の実験で、高電離単原子イオン【N^(i+)】を観測した。これは衝突の初期に高電離分子イオン【N^(j+)_2】が形式され、そしてクーロン爆発によって分裂し、高電離単原子イオンが生成されると推定した。このことを裏づけるために分子ターゲットの種類を多くして実験を行った。入射イオンは1.05MeV/amu【Ar^(12+)】を用いた。観測される電荷分布の各ピークの位置のずれから、衝突時に得られる初期の運動エネルギーを算出した。【N_2】、【C_2】【H_2】、CO、NO、【I_2】の単原子イオンの電荷i=3〜17について整理すると、初期の運動エネルギーはクーロン力による分裂と考えた値にほぼ一致し、また【i^2】に比例する。このことから、分子ターゲットの時の高電離単原子イオンは高電離分子イオンがクーロン爆発によって分裂し、生成されることが立証された。今年度に交付された補助金で「高速重イオン分析用静電型アナライザーを製作し、既存の2次イオン測定装置の後方に設置(昭62年2月)し、調整中である。
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