室温、3GPaまでの高封圧下での岩石の変形・破壊・摩擦実験の回収試料約100個についての顕鏡的研究から次のようなことが判明した。 (1)脆性破壊を示す低孔隙率岩石については、低封圧での最終破壊は、破断面に微小クラックの集中を伴って起る。封圧が高くなると微小クラックの破断面への集中は見られず、平行あるいは共役な小クラックが卓越する。これは、既に得られているAE活動度、圧縮強度及び摩擦強度の測定から推定された脆性破壊機構の低圧型から高圧型への変化に対応している。破断面の圧縮軸とのなす角度は前者では【15^0】〜【40^0】であるが、後者では【45^0】になる。更に、封圧下での圧縮強度の寸法効果を推定し、地殻規模の有効寸法をもつ岩石の強度を見積ると、この破壊機構の低圧型から高圧型への変化は地下数kmないし十数kmで起り得る。このことは初生断層形成及び既在断層運動過程に対して興味深い示唆を与える。 (2)細粒多孔質岩石は延性領域で封圧と応力の増加につれ、空孔の閉鎖と圧密が起る。更に高い応力下では細粒化が起り、その細粒化された粒子の流動が起る。その機構を明かにするためクリープ歪の解析が行われ封圧2GPaで累乗則クリープに変化がみられることが判明した。高温での実験はまだ行われていないが、これは地球内部の流動機構の解明にとって重要である。 以上は主として現在までに行われた光学顕微鏡による結果からの知見であるが、62年度への継続研究により走査電子顕微鏡による研究が完了する予定である。それらは、より詳細な、また更に新しい知見を堤供することが期待されている。同時に高温下での実験への展開が急がれることが判明した。何故なら、(1)の高圧型破断面の形態は高温実験で知られている高温断層あるいは転移型と呼ばれているものと一致しているのと、(2)の延性流動機構はとくに高温で重要であるからである。
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