研究概要 |
室温, 3GPaまでの高封圧下での岩石の変形・破壊・摩擦実験から得られている力学的物性と, 実験後の回収試料の顕鏡的研究から次のことがわかった. 1.低孔隙率の珪酸塩岩石は, 圧縮強度と摩擦強度が等しくなる封圧を境に, 脆性破壊様式が低圧型から高圧型へと変化する. (1)低圧型破壊は, 圧縮強度の封圧変化, AE活動度及び破壊面の微視的形態において, 従来から知られている脆性破壊のものと一致している. (2)高圧型破壊は従来のものと異なる:圧縮強度は封圧と共に線型に増加し, その増加率は小さくなり岩種によらない:AEの急増を伴わず突然最終破壊に至:破壊面は圧縮軸に45°で鋭く, その近傍に破砕帯や微小クラックの集中はない, この高圧型破壊は, 破壊面の形態の類似から, 高温実験で得られている. 脆性破壊と延性クリープの間の転移型に相当すると推察された. 理論的及び高温での実験的研究が今後の展開として要求される. (3)封圧下の強度の寸法効果を考慮すると, 地下数kmで低圧型から高圧型へ変化すると推察される. これは, 地殻の破壊は高圧型であり地震は高圧型破壊でモデル化すべきであることを示唆する. 初生断層形成と既存断層運動を含む断層形成過程のモデルも作られた. 現実的な地球内部への適用のためには, 大型の岩石試料に対する実験的研究が必要である. 2.孔隙率79の細粒玄武岩は, 封圧下でカタクラスチック延性流動を示す. それは空孔野閉鎖による圧密で特徴づけられる. 高応力下では圧密は完了する. 更に高応力下では, 冪乗則クリープの応力指数が3から1へ変化する流動を示す. その変化は, 残存空孔の閉鎖とを伴う細粒化部の拡大に起因する. この流動機構の変化に伴って, 地球深部で粘生係数の105Pa・sの不連続な減少が起こることが推定された. しかし, この議論のためは高温での実験的研究を行う必要がある.
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