研究概要 |
1986年以来、種々の電磁探査法を用いて、阿蘇中央火口丘をはじめ、カルデラ周辺地域の地殻電気抵抗の構造を求めて来た。すなわち、シュランベルジャー垂直探査,VLF-MT,ELF-MT,フラックスゲート磁力計による磁場3成分および地電流2成分の観測および解析である。 装置の改良については、(1)オーディオカセットテープによる磁場記録の高密度記録法の完成。(2)VLF(10.2KHz)受信機の開発、応用。(3)小型ELFメータの開発等がある。これらを用いて、(4)阿蘇カルデラ全域で、合計202地点におよぶELF-MT,VLF-MTによる観測を完了し、電気抵抗構造図を完成させた。(5)中部九州の25地点で長周期MT観測を実施し、地下100Kmより浅い大規模の電気構造を明らかにした。その結果、(6)阿蘇地域の電気構造は50Ωm以下の低比抵抗層、500Ωm以上の高低抗層、そして中間層の3つに分類できる。(7)特に10Ωm以下の低抵抗は温泉湧出地帯と、中岳火口周辺に限られる。(8)高抵抗層は基盤岩や変成を受けていない火山岩を代表すると思われる。等の知見をえた。 また発展的な成果として、長周期インダクション・ベクトルが海深分布から期待できる方向を示さず、東シナ海方向を向く事実が判明した。これは、九州西北部の東シナ海の海底下が高温で、電気良導層であることを予測させる。 当初の目的の一つであった。阿蘇の下に顕著なマグマ溜りがあるか否かについては明確な答えが出ていない。これはULF-MT測定が不足しているためで、今後、追加観測を行なう予定である。
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