研究概要 |
昨年度は, 従来の応力測定法とまったく異なり, 掘らずに地下深い応力を連続測定する新しい方法を提案した. S波偏光異方性を利用し, 地下割れ目の諸性質(方向・密度・形状比等)を求め, 地下応力状態を推定する方法である. 応力下におかれた岩石中のクラックは異方性を示す. この異方性岩石中をS波が通過すると, S波偏光異方性と呼ばれる2つの波に分離する現象が起きる. この2つの波の振動方向, 到達時間差, 減衰(Q値)の差から, 上記割れ目のパラメータを詳しく求めることができる. これらは理論的にも実験的にも古くから知られていたが, 実際の地殻に応用されることはほとんどなかった. 昨年度は400個の微小地震を用い, 近畿地方地殻内クラックの方向・密度等の推定に成功した. 本年度は観測点を新たに設置し, 従来の我々のモデル(クラック異方性)を検証し, 方法の確かさを裏づけた. さらに本年度は四国全域の地震観測点の記録を収集解析及び観測から地殻割れ目の諸性質・応力状態を推定した. 特に大地震前後での微小クラックの変化の検出に注目し伊豆大島噴火前後の記録の解析を行ったのが注目される. このような地殻内の微小な変化を検出できるは, 今のところS波偏光異方性を用いる方法だけと考えられ, 今後とも研究を推進する必要がある. クラックにより偏光分離した2つのS波の振動方向・到達時間差・Q値の差は, クラックの方向・傾斜・密度・形状比を与える. これを利用し微小地震観測点で記録された地殻地震のS波を用い, それぞれの観測点下の応力分布変化を推定する試みを続けて行う予定である. 結果は現在解析中であるが, 似たような試みは南カリフォルニアでも行われ, 時間差の有意な変化が検出されたとの報告があり, 興味が持たれる.
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