本研究は、野外における地球電磁気諸観測においてノイズとみなされている電話回線信号による電場・磁場変化を、むしろ積極的に測定対象としてその地域分布を調べることにより、地域の地下構造に関する知見を得る可能性を追求しようとするものである。観測地震地域は1943年鳥取地震により生じた吉岡・鹿野断層一帯で、周辺には温泉湧出もみられる。なお1984年にこの地域の一部において試行的観測を行い、結果に関する積極的見通しを得て結果を公表している。現地観測は、1986年11月〜12月に実施した。電場の観測は、銅・硫酸銅非分極電極を東西・南北方向にぞれぞれ30m間隔で設置し、得られた1Hz信号をペンレコーダで記録する方法によった。測点は、沖積面の平地ばかりでなく基盤花崗岩が露出している山地上にも設け、総計39点である。得られた結果は、吉岡・鹿野断層及び温泉湧出地域が低比低坑帯となっているという従来の研究結果と、信号電流の地中流入地点である電話局の配置から期待されるものと極めて調和的であった。即ち、親局である鳥取NTT局周辺で電場が最大でかつ局方向に偏り、各測点における電場の一般的方向がほぼ東西であることは当然として、断層が沖積層に完全に蔽われている地域においても、推定断層位置によく一致して電場強度が小さくかつ方向が乱れていて、断層が低比低抗帯で電流の集中があることを示している。また花崗岩山地上においても、断層の外側では電場が大きいのに、内側では極めて小さく方向も異常である。なお温泉湧出地域内の電場は一般に小さいことが判明した。架線中の通話電流による磁場の地域分布の測定による地下探査は、フィルター不調のため不成功で、モデル計算と共に今後の課題として残された。なお以上の結果はCA研究会(1987年2月、東京大学地震研究所)において発表した。
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