研究概要 |
1.浅海をモデル化した実験を風洞水槽において行なうため, 浅海環境を実現できる装置を作製した. すなわち, 長さ20m, 幅0.6mの水槽において水深数cm〜15cmの浅海条件を設定できる. この風洞水槽を用いて, 実験を開始し現在予備的な解析を行なっている. 2.非定常非一様場の海面境界過程のモデル化において, 最も重要で, しかも未解決の問題は, 風の海面応力が風と風波の状態に対してどのようになるかという点であった. 今回, オーストラリア・バス海峡における嵐のデータから, 吹走距離が十分長く, 風と局所的に平衡にある風波であって, しかも周期が数秒ないし十数秒であるような, 風の海面応力の風波依存をしらべるのに特別に都合のよいデータを選び, 新しい解析の仕方によって検討した結果, 研究代表者らが数年来提案していた, 粗度定数が風波のピーク角周波数と空気の摩擦速度の比に比例するという形式が, 比例定数をも含めて, 統計的に正しいことを示す決定的な結果が得られた. この結果によると, たとえば風速20m/s, 風速の周期10秒の場合, 従来の風の海面応力の値の3倍程度大きくなる. この形式は, 海面境界過程と波浪モデルとを結合させるのに極めて好都合な形であり, 本研究の展開における重要な布石となった. 3.上記の風波場と風からの運動量インプットを記述する基本法則を東北波浪モデルに組み込むために, 現波浪モデルを現在の計算機の能力に合わせて整備・改良を進めた. この作業によりモデルの入出力方法が単純化され, 新たな発展が可能となった.
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