研究概要 |
1.東北大学農学部附属農場(宮城県鳴子町川渡)内の谷(長さ1km、「大窪)に三次元連続自記記録観測網を展開し以下の測定を行った。(1)谷の上流地点の頂上より下流へ800mの谷底において、高さ40mまでの気温,風速の鉛直分布を測定した。(2)同地点から尾根までの斜面上の気温の水平分布を測定した。(3)谷内部数ケ所の地表面温度を測定した。(4)尾根と頂上で風向風速,気温および放射量を測定した。 2.以上の観測から次のような山谷風の定量的諸性質を明らかにすることができた。(1)山谷風の層厚と地表面の加熱・冷却,一般場の温位勾配,吹走距離,斜面角,流れの収束などとの関係をパーセルモデルの手法を用いて観測資料より明らかにした。(2)山谷風の代表風速についても層厚と同様の関係を明らかにした。(3)V字谷内の温位と風速の分布の規格化を行い分布型の一般化関数を得た。(4)(1),(2)をふまえ、山谷風の出現の有無や、層厚,代表風速などの特性量と気象要素の関係を長期間の観測により見いだした。 3.宮城県志津川町の試験地では谷の上・中・下流の気温,風速及び放射量の長期観測を実施し「大窪」での結果と比較した。その結果、(1)山谷風の出現形態は地形と関係があることが明らかになった。(2)係留気球,パイバルによる山谷風の温位,風速分布の観測から地形と一般場が山谷風におよぼす影響を明らかにした。一般風の風向方向に谷の走行がある場合は一般風がある程度強くなると一般風の風向により山谷風を加速または減速することが明らかになった。 4.一般風がない時の山谷風の特徴量についてはパーセルモデルの手法がそのまま適用できることが明らかになった。しかし一般風が適当に強く吹き山谷風と相互作用する場合はなんらかの修正をする必要がある。
|