気温等の気候要素の10年以上の期間の平均値の不連続的に変化する現象が気候ジャンプである。気候変動は高度の非線型過程であるから、実際の観測データーに現れる変化は、非線型システムの特微を持っているものと期待される。非線型力学システムの理論的研究において、時間平均値の不連続的変化の発現が示されていたが、本研究の研究代表者と研究分担者は、始めてそのような不連続を気候変動の観測データーにおいて発見して「気候ジャンプ」と命名した。 実際の気候変動では、激しい年々変動が起きており、10年以上の平均値の決定において統計誤差を無視できない。そこで本研究では、統計的に有意な気候ジャンプの検出方法を確立した。この方法では、気候ジャンプでの特性を保持したまま、年々変化を抑制すると共に周期的な変化や単調に増大するような場合を気候ジャンプとして誤認しないように配虜している。 この方法を、1901年以降の我国の海面気圧・地上気温・降水量及び日照時間の月平均気候データーに適用した。その結果、1950年頃に地上気温・降水量及び日照時間について共通した気候ジャンプが検出された。北海道ではあまり明瞭ではなかったが、本州では顕著であった。このような事実は、気候ジャンプがいたるところで一様に発現するのではなく、地域性のある事を示している。また、種々の気候要素の気候ジャンプが同じ頃に共通して検出された事実は、この気候ジャンプが大気大循環の唐突な変化によるものであることを示唆している。それ故、北半球の海面気圧分布についても同様の検出を試みて、1920年頃と1950年頃の2回の気候ジャンプを検出できた。 このような気候ジャンプの発現の引金作用として、火山大爆発が有力な候補であることを示唆する事実を指摘した。
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