研究分担者 |
神沢 博 国立極地研究所, 研究系, 助手 (20150047)
和田 誠 国立極地研究所, 研究系, 助手 (40132716)
西尾 文彦 国立極地研究所, 資料系, 助教授 (40044789)
藤井 理行 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (20125214)
渡辺 興亜 国立極地研究所, 研究系, 教授 (60111861)
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研究概要 |
南極域では, 南極大陸そのものが巨大な氷床であること, 大陸の周囲が海氷, 海洋で囲まれていることから, 水循環という観点から気候をとらえることが重要となる. 今年度は, 南極域での気柱水蒸気量の水平分布を, 気象衛星NOAA/TOVSデータから導出する方法を開発することを目的とした研究を行った. 南極昭和基地では, 1980年以来, ほぼ1日に1回, 気象衛星NOAAデータを受信している. 昭和基地を中心として約3000km×5000kmの広大な領域のデータが, NOAAから得られる. TOVSの場合の水平分解能は約20km弱である. 水蒸気の吸収帯域にある3つのチャンネル(8.2μm,7.3μm,6.7μm)と温度分布を得るための7つのチャンネルの放射量データを用いた. まず, 水蒸気の鉛直分布をある形に仮定する. その水蒸気分布の時に, 温度分布用の7つのチャンネルから得られた温度の鉛直分布のもとで, 理論的に期待される水蒸気用3チャンネルの放射量を求める. その理論値と実際に観測された3つのチャンネルの放射量の値とを比較する. その差が小さくなるように, 水蒸気の鉛直分布を仮定し直す. この過程を繰り返して, 真の水蒸気鉛直分布に近いものを得る, という逐次代入法を用いた. 気柱水蒸気量は, その鉛直分布の値を鉛直に積分して得た. 水蒸気の鉛直分布については, 昭和基地の気象ゾンデ観測値と比べたところ, 大きな差異があり, これからの検討を要する. しかしながら, 今年度の目的とした気柱水蒸気量については, NOAAから得たものと気象ゾンデによるものとの間に非常に良い相関があることが分かった. 気柱水蒸気量の水平分布を議論する上では, この方法で得られたNOAAによる気柱水蒸気量は, 充分使用に耐えるものであると考えられる この方法をさらに改善し, 1980年以来蓄積されているNOAAデータに適用して, 気柱水蒸気量水平分布の季節変化, 年々変動を明らかにしたい.
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