国内の二つのハレー彗星探査衛星「さきがけ」と「すいせい」によるハレー彗星の国際共同観測は昭和61年3月に実施され成功をおさめた。それらの観測結果はNatureの5月号とGeophysical Research Letterの8月号に特集としてまとめられているのと同時に日本地球電磁気学会等で発表された。私達はそれらの公表された結果と同時に、多くの未発表の観測データを衛星観測者の好意によって資料として入手した。昭和60年から61年前半にかけて二次元電磁流体力学(MHD)コードを用いて、一般的な条件下の太陽風と彗星相互作用の計算シミュレーションを集中的に実行して、その結果を61年2月に宇宙科学研究所で開催されたハレー彗星のシンポジウムで発表し、衛星観測者に議論の資料として提供した。又その中で彗星プラズマ尾が大きな擾乱を受ける彗星尾の分理現象の一つの説明として、太陽真下点での磁気島の形成とそれに続く二つの磁気島の強い結合を新たに提案し、Geophysical Research Letterの9月号に掲載された。続いて61年度は「すいせい」の衛星観測結果と直接比較出来る様に、彗星からのプラズマ生成を含めた三次元MHDモデルを新たに開発し、衛星観測から得られた太陽風とハレー彗星の典型的パラメータを用いて計算機シミュレーションを実施して、観測データに近い太陽風とハレー彗星相互作用の構造を再現することに成功した。その結果は61年11月に東京で開かれた第2回実験室とスペースプラズマ物理の国際シンポジウムで発表し、又62年3月に名古屋で開かれる核融合プラズマの計算機シミュレーションに関する日米ワークショップで発表する予定である。62年度、三次元MHDシミュレーションから太陽風及び惑星間磁場のパラメータを変化させた場合、彗星プラズマがどの様な応答をするかを更に調べて、他の惑星との比較において太陽風とハレー彗星相互作用の特徴を明確にしたいと思っている。
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