研究概要 |
光電子移動が効率よく起る有機金属錯体の光化学反応は太陽エネルギーの化学変換や貯蔵などの問題に関連した重要な研究課題である。本研究の目的は、安定なアセチリド結合を持つ白金,ロジウムなどの錯体の中心金属を高分子にσ-結合で結合した担持型アセチリド錯体を合成し、これらを光反応における固定化効果の系統的な研究に応用することである。 合成に関しては次の3法を研究した。【i】)市販ポリスチレン樹脂のパラ位をヨー素化し、アセチレン,ジアセチレン,P-ジエチニルベンゼン,9,10-ジエチニルアントラセンなどを、第一銅塩,ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム触媒を用いたアミン溶媒中でのエチニル化反応を用いて導入し、ついで遷移金属錯体のハロゲン誘導体との第一銅塩触媒による脱ハロゲン化水素反応によって目的とする錯体を固定化した。【ii】)無機担体に末端アセチレン基を導入するために、トリアルコキシシリル基を持つアセチレン誘導体の合成法,およびシリカ,アルミナへの固定化を研究した。続いて第一銅塩触媒を用いた脱ハロゲン化水素反応による金属錯体の固定化反応を研究した。【iii】)主鎖にホスフィン基を持つポリマー錯体に関しては、ビス(トリアルキルホスフィン)ジクロロ金属錯体とジエチニルホスフィンとの縮重合で、安定なパラジウムアセチリド型ポリマー錯体の合成に成功し、得られたポリマー錯体と種々の遷移金属錯体との高分子反応を、詳しく検討した。 上記三法で合成された固定化錯体の中で、金属カルボニル基を含む系について、光置換反応および分解反応に対する高分子効果を検討した。現在、アントラセンを含むロジウムアセチリド錯体について、光電子移動反応,アルコールの脱水素反応,オレフィンの異性化反応に対する触媒作用,および高分子効果について研究中である。
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