式1に示すようにチタノセン-エチレン錯体(1)と各種金属カルボニル(2)の反応により、フィシャ型のカルベン錯体(3)が合成できることを見いだした。単離した錯体は、スペクトルデーターよりチタン-酸素結合を環内に含むメタラサイクル構造であると決定し、さらに3bに関してX線解析を行うことによって確認した。 これらの錯体は、熱的に不安定であり、分解してC(3)-C(4)結合が選択的に切断され、エチレンが生成する。このようにカルベン炭素とそのアルキル置換基との間の炭素-炭素結合が切れる反応は、通常フィシャ型カルベン錯体では見られない。このような特異な性質はチタナシクロペンタン化合物としての性質を有していることによる。さらに錯体3と一酸化炭素の反応を行うと一酸化炭素がチタン-炭素結合に挿入したアシル錯体となる。この反応は可逆的であり、一酸化炭素雰囲気をアルゴン雰囲気にすると元の錯体にもどる。tert-ブチルイソシアニドとの反応は、チタン-炭素結合にイソシアニドが2分子挿入しチタン-酸素結合が切断され、図1に示す錯体4となる。
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