研究概要 |
本研究では主として、二重マイケル反応による1-アセチルシクロヘキセンから1-デカロン誘導体の合成について検討を加えた。またこの反応をトランス-デカリン骨格有するテルペノイド(±)+クシラール、(±)-ε-カジネン,(±)-クシトンの合成に応用した。 1.ルイス酸存在下の二重マイケル反応:1-アセチルシクロヘキセンのトリメチルシリルエノールエーテル体と各種マイケル受容体とをジエチルアルミニウムクロリド存在下に反応させると、一挙に1-デカロン誘導体が得られた。生成物の立体化学はシス-ステロイド型と決められた。反応径路は、中間体が得られた事から、二段階の連続したマイケル反応によるものと考えられる。 2.塩基性条件下における二重マイケル反応:シリルエノールエーテルをメチルリシウムで処理する事により得られたエノレートにα-トリメチルシリルメチルビニルケトンを加え、低収率ながら1-デカロン誘導体を得た。ま、中間体であるマイケル付加体が単離された事より、反応は、二重マイケル反応により進行しているものと考えられる。 3.天然物合成への応用:ε-カジネン,クシトンの合成には、4-アセチル-3-シクロヘキセノン1-エチレンアセタールのシリルエノールエーテル体とメチルビニルケトンとの二重マイケル付加体を出発原料とした。このものを塩基で処理しトランス-デカリン骨格へと異性化させた。2つのカルボニル基には反応性の差が見られたので、これを利用して合成を進めた結果、共に6工程で目的天然物に至った。クシラールの合成には、アクリル酸メチルとの二重マイケル付加体を用いた。塩基でトランス-デカリン骨格へ異性化後、7工程で天然物を得た。本合成により、今迄未定であったビニル基の配向を決定できた。なお、クシトン、クシラールの合成については、本研究が最初の例である。
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